どらごんぼーる考察

がんだまぁBlogからドラゴンボール記事を移植しました。以後ドラゴンボール考察はここで展開します。

セルゲーム時のベジータの心理

人造人間編はベジータが調子に乗らなかったらすぐ終わっていたというのはよく言われることで、特にセルを完全体にさせたことは最大の戦犯と言えます。ベジータがそのことについてどのくらい責任を感じていたかは分かりませんが、セルゲーム時のベジータは、かなり複雑な感情に苛まれていたのではないかと思い当たりました。

 

というのも、まず自信満々にセルを完全体にしておきながら、完膚なきまでに叩きのめされており、この時点でベジータのプライドはズタズタです。しかも、もう一度精神と時の部屋で修行しても、勝てそうにないことまで分かっていました。

悟空はベジータとは別のアプローチで修行し、ベジータ以上の力を身につけました。それだけでもさらにベジータのプライドは傷ついていますが、その悟空でさえまだセルには及ばないことは、悟空がカリン様の前で半分の力を見せた時に分かったはずです。悟空は悟飯が超サイヤ人2にならないと勝てないと分かっていましたが、ベジータはそれも知らないため、相当焦っていたのではないかと思います。勝ち筋がないからです。

一人で勝てないと分かれば、ベジータは周囲の力を利用するということは、ナメック星での行動を見ても明らかです。悟空がセルに挑む際の「フィニッシュを決めるのはこの俺だ」というセリフは、全員でかかって卑怯な手を使ってでも倒すしかない、という前提からの言葉だったとも考えられます。悟空が1対1で勝てるとは思っていなかったのかもしれません。

実際、セルはファイナルフラッシュやフルパワーのかめはめ波が直撃すれば消滅させられる相手ではあるので、油断させて避けられない状況を作れば倒すことが可能です。ベジータが考えていたのは、どうやってその状況を作るかどうかだったのでしょう。悟空との戦いでダメージを受けたセルを、一瞬の隙をついて殺す機会を窺っていたのかもしれません。かつてグルドにやったように。

しかし、セルはセルジュニアを生み出しそれぞれと戦わせるという能力も持っていました。そしてそのセルジュニアの戦闘力も、当時のベジータと同等レベルであり、これを無視してセルを狙いに行けるほどの余裕はありませんでした。

悟飯が覚醒し形勢逆転したものの、敗北を悟ったセルは地球ごと自爆という選択肢に出ます。この時点で、ベジータは完全に詰みました。なんとかできるのは瞬間移動を使える悟空だけでした。しかしセルは自爆後も再生しパワーアップして戻ってきます。そしてトランクスが殺されてしまいました。

ここでベジータのストレスは頂点に達します。以前の考察で悟飯が自分達を大きく超える力を身につけ、永遠の目標である悟空に先立たれ、息子のトランクスは一撃で殺されるという事実が全て重なり、やぶれかぶれになってしまったと考えましたが、実際にはそこに「セルを倒すのは(完全体にした)自分でなければならない」という使命感が叶わないことが加わっていたのかもしれません。本来であれば、その時点でのセルと悟飯の力は五分五分と思われ、ベジータが隙をつくタイミングが生まれる可能性はまだ残っていました。しかし冷静さを失ってしまい、おそらくそれまで時が来るまで溜めていたであろう力を投げ出してしまい、更に悟飯が致命的なダメージを受ける機会を作ってしまいました。

それでも、その後ベジータが一撃を加えることで悟飯がセルを倒すきっかけを与えることができました。おそらく、悟飯に庇われ冷静さを取り戻すことができたのでしょう。逆上したベジータの攻撃は再生直後のセルに全くダメージを与えられていませんでしたが、悟飯にかめはめ波を放っているセルはベジータの攻撃にそこそこ驚くくらいにはダメージを受けていました。全力を正面に振り向けていたからだとは思いますが、もしかしたら、ここぞという時のための一撃の力は、逆上してもなお残していたのかもしれません。

つまりベジータのセルへの最後の一撃は、あの瞬間咄嗟に出た行動ではなく、セルゲームの開催が決まったその時から、ベジータがずっと狙っていた攻撃だった可能性があるのです。理想は、それがとどめの一撃になることだったと思いますが、本当に格上の相手には騙し討ちも辞さないベジータですから、とどめが誰であっても相手を殺してしまえば良いわけで、ある程度狙い通りだったということになります。

原作連載当時、ベジータのフルパワーの攻撃(グミ撃ち)が全く通じなかったセルが、悟飯とのかめはめ波の撃ち合い中とはいえ不意打ちに動揺するくらいダメージを受けることに違和感を感じていたのですが、そのベジータの攻撃は、セルを完全体にし、悟空にも悟飯にも実力を抜かれ、トランクスも守れなかった者が、セルゲーム当初からずっと狙っていた魂の一撃だったと考えると、少しは納得できるのではないでしょうか。