どらごんぼーる考察

がんだまぁBlogからドラゴンボール記事を移植しました。以後ドラゴンボール考察はここで展開します。

追悼・鳥山明

 ドラゴンボールの原作者である鳥山明氏が亡くなりました。1ファンとして非常に残念です。謹んで哀悼の意を表します。

 

 特に、このブログでは鳥山原作の設定かどうかに重点を置いて考察していました。もう新しい鳥山設定が生まれなくなることは大変残念です。

 ドラゴンボールのビジネスはバンダイナムコの経営を左右するほど大きなものになっていますので、ドラゴンボールの新作作品の制作は決して終わることはないでしょう。しかし鳥山原作とそれ以外の作品では、特にキャラクターの強さの序列や、キャラクターの性格描写の深みに大きな差があります。原作者以外はあまり迂闊に踏み込んだ描写ができないので(実質二次創作のようなものですから)、致し方ない部分があります。しかし、もうその原作者がいない以上、なるべく原作者の意に沿った作品作りを続けて欲しいという思いから、このブログを続けていきたいと思います。

 

というわけで、鳥山原作とそれ以外の作品で何が違うかを、ここに書き記しておきたいと思います。

 

(1)強さの序列

 鳥山原作は強さの序列が明確です。例えば魔人ブウの強さは善<純粋<悪<ゴテンクス吸収<悟飯吸収と明確に描かれています。それを最後の敵だからとアニメで純粋ブウが一番強いように悟空に言わせるのはごまかしにすぎません。盛り上げるために力を失ったキャラが何回も理屈なしに回復したり、明らかに力の差があるキャラ同士の戦いがいい勝負になったりすることはありません。いい勝負をさせたいなら、片方を弱らせるなど、理屈ではっきり説明できる描き方にして欲しいものです。

 

(2)孫悟空の性格

 最も違いが現れるのが、主人公たる悟空の性格です。鳥山氏が描く悟空は、とにかく戦いが好きで、強くなることを何よりも優先し、そして誰とも戦いを通じていいライバルになれると信じています。田舎育ちで純粋なので人を疑うことをしません。全ての戦闘を試合と捉え、試合に負けないために強くなります。殺しは反則なので許しません。戦いに勝つためには頭も使いますし、非情な判断を下すこともあります。弱いヤツは割と見下します。

 しかしアニメの悟空では、世界を救うために悪いヤツと戦います。許せないヤツは容赦なく消滅させます。必要以上に訛った喋りをします。悪いことをするヤツに怒ります。頭が悪く、失礼な行動を取ったりします。弱い者を守るためにも戦います。いわゆる、一般的な「ヒーロー」の属性が追加されがちなのがアニメの悟空です。

 鳥山明が描く孫悟空は決してヒーローではありません。ただ向上心の塊で、決して諦めないだけです。弱き者や、世界の危機のために戦う存在ではないのです。

 

(3)ベジータの性格

 ベジータは常に成長しているキャラクターです。そのため、どこかの時期のベジータのキャラを切り取ってしまうと、その時点のベジータとしては違和感を覚えるようになります。

 ベジータサイヤ人の王子として生まれ、サイヤ人が宇宙最強の戦闘民族で、その中でも最強の自分は宇宙最強であると教えられて育ってきました。しかし同じサイヤ人ながら自分より強いカカロットと出会い、カカロットより強くなることを目指してきました。その過程で地球人のブルマと出会い子を設け、徐々に家族を大切に思う心が芽生えてきます。その思いとカカロットへの執着を天秤にかけ、後者を選んだものの選びきれなかったのが魔人ブウ編です。そしてカカロットへのわだかまりを解消し、それでもなおカカロットよりも強くなることを目指し、破壊神や天使に学びカカロットとは違う強さを得ようとしているのが現在の「超」でした。原作最終回の完全版でもベジータはまだカカロットより強くなろうとしているので、多分それまでに悟空を超えることはできなかったのでしょう…。

 悟空ほどアニメのベジータにキャラから外れるようなことは起きないのですが、少々ギャグキャラにされすぎているきらいがあります。ベジータはどちらかというとギャグ的な展開の中でもシリアスになってしまうところに笑いどころがあるのですが、ベジータ本人がピエロのようになってしまうのは少し違うかなと思います。まぁ、ビルスの前でビンゴダンス踊ったのは鳥山原作作品なんですが、あれも目的のためにやむなくピエロになっただけですからね。

 

(3)ピッコロの性格

 ピッコロに関しては、どちらかと言うとアニメで個性が強化されたキャラクターかもしれません。というのも、悟飯と師弟関係にあるものの共闘するシーンが原作に少なく、アニメ(特に劇場版)の方が頻度が高いからです。その結果、悟飯のピンチには必ず現れるキャラという印象が強くなりました。

 ピッコロの場合、神様と同化する前後で割と性格が変わっているので、それを忘れてマジュニア時代の性格で描かれると違和感を覚えるかもしれません。同化後は、いわゆる悪者っぽさが鳴りをひそめ、理知的で最も状況理解力がある(メタ的に言えば説明役になりがち)キャラとして描かれています。魔人ブウが知能を得るために吸収したキャラですからね。

 

(4)孫悟飯の性格

 悟飯(特に成長後)は難しいキャラクターです。というのも、鳥山氏自身がどう描くか苦心していたからです。何よりも「心優しい」のですが、それはどちらかというと「戦いが好きではない」ことから来ており、それは悟空と違って格闘技としての戦いの楽しさを知らないからでもあります。鳥山氏はこの点を大事にしているので、どうしても戦わせる展開にならないと戦わない=修行もしないので自発的に強くならないという欠点を抱えています。アルティメット化が常時なのか変身扱いなのかもブレていたのも描きづらかった要因ですね。

 「スーパーヒーロー」で育児を疎かにするほど研究に没頭しており、悟空が戦いに向かう気持ちがそのまま研究に向かっているキャラという個性が追加されたので、多少描き方に幅が出たとは思います。好みが違うだけで、本質的には悟空と似た性格ということですね。このような新たな個性の付加は原作者にしかできないと思うので、その点も残念です。

 

 すでにドラゴンボールDAIMAの放送も決まっていますし、ゲームもずっと作られ続けるのでしょうから、少しでも「鳥山明の世界」をキープすることをスタッフの皆さんが努めることに期待して、ブログの執筆を続けていきたいと思います。