どらごんぼーる考察

がんだまぁBlogからドラゴンボール記事を移植しました。以後ドラゴンボール考察はここで展開します。

ピッコロにとっての悟飯

悟飯とピッコロと言えば師弟関係です。

そして悟飯にとっては、ピッコロは師匠であり、父親よりも父親らしい存在であり、ピンチの時には必ず助けに来てくれる(劇場版限定)存在でした。

アニメではピッコロのことを「おじさん」と呼ぶことがあったなど、悟飯から見ると父親よりも背の高いピッコロは、かなり年上の存在であるように感じていたように描かれています。

 

しかし、実際のところピッコロが生まれたのはピッコロ大魔王が死んだ瞬間です。そこから3年後に悟空と天下一武道会で戦い、その5年後にサイヤ人ラディッツと戦っています。このときピッコロは8歳です。その時点で悟飯は4歳ですから、歳の差は4歳しか離れていません。

実際のところピッコロは3歳の時点ですでに身長や体格は完成していましたから、その成長速度は普通ではないのですが、それでも年齢的には、悟飯とは兄弟くらいにしか離れていないのです。

 

それを踏まえて、ピッコロへの悟飯への言動を振り返ってみると、悟飯にとってのピッコロが「尊敬すべき師匠」であり「おじさん」であったとしても、ピッコロにとっての悟飯はもう少し近い「弟」くらいの存在だったのではないか、と思い当たりました。

 

例えば、「恨むならてめえの運命を恨むんだな…このオレのように…」という台詞。この言葉を悟飯に向けて言った時の悟飯は、いずれ攻めてくるサイヤ人を迎え撃つためには莫大な戦闘力を秘めた悟飯の力に期待せざるを得ないことから、己の意思に関わらず戦えるように鍛えられるしか選択肢がないという状況でした。この状況に自分を重ねるということは、ピッコロ自身もまた、自分に選択肢が存在せず、ただ父の無念を晴らすために悟空を殺すことを目的とした修行をし続けるしかなかった現実が、本当は嫌だったという心情を表しています。

ピッコロにとっての悟空は、人造人間のそれと同じように、生まれたときから殺すことを宿命付けられた敵だったわけです。しかしその悟空は敗れても自分を殺さなかった、では目的を果たせず生き長らえた自分は何のために存在しているのか、そんな自問自答がサイヤ人来襲までのピッコロにはあったのかもしれません。

そして宿敵の息子・悟飯に、ピッコロ大魔王の息子である自分の姿を重ねたことが、その後の悟飯への心理的な傾倒に向かっていくのでしょう。

 

そしてもう一つピックアップしたいのが、悟飯をかばって死ぬときの有名な台詞。「オレとまともにしゃべってくれたのはおまえだけだった」「きさまといた数ヶ月…悪くなかったぜ」という言葉は、それまでのピッコロ像からは想像もつかないほどに丸い台詞でした。ここで、悟飯がピッコロを一方的に慕っているのではなく、ピッコロ自身も悟飯に救われていたことがわかります。

「ピッコロ大魔王の生まれ変わり」というだけで、一般人も悟空の仲間たちも逃げ出してしまうような世界だったわけですから、確かにピッコロとまともにしゃべってくれる地球人はいなかったでしょう。そのことをピッコロは辛いものだと感じていたことがわかる台詞になっています。

一方で父である大魔王を知らない悟飯にとっては、ピッコロは「昔お父さんと戦った強い人」くらいにしか思っていなかったのでしょう(悟空はピッコロを悪い奴だと思っていないので、悟飯にも悪い奴とは言わなかったでしょう。チチは分かりませんが、彼女はピッコロ大魔王一味から特に被害を受けていませんし)。つまり悪行の限りを尽くした大魔王の生まれ変わりであるという固定観念がなく、フラットにただの「(怖い)おじさん」として接してくれたこと自体が、ピッコロにとっては衝撃的だったのではないかと思われます。

 

つまりピッコロにとって、悟飯は最初の「敵ではない他人」だったのです。それは人間心理で言えば限りなく家族に近い存在と言えます。赤ん坊にとって初めての他人は家族だからです。

普通は最初の家族と言えば両親ですが、悟飯は年下なので弟に近い存在と言えます。ピッコロにとって悟飯は息子や弟子ではなく弟だったのです。そのように考えると、ピッコロの悟飯への態度も少し違って見えてくるのではないでしょうか。

 

ベジータは悟空に生かされたことによって、最終的に家族を知り、悟空よりも人間らしい存在になりましたが、ピッコロもまた悟空に生かされた事により、悟飯という兄弟を得て新しい存在になったとさえ言えます。

その後ピッコロは、自分自身のルーツを知る事になり、ただの「大魔王の生まれ変わり」なのではなく、ナメック星人の数少ない生き残りであるという自覚が生まれることになります。生き返った直後にすぐフリーザと戦いたがったのは、単に悟飯を助けたいというだけではなく、ナメック星に行ってみたい、ナメック星をめちゃくちゃにしたフリーザが許せないという感情もあったのだろうと思います。

さらにネイルと同化しナメック星人としての誇りを強く持ち、神様と同化することで地球のため、地球人のために生きることができるようになったと言えます。

それでも悟飯は、最初に出会った人生の兄弟として大切な存在で、だからこそ彼の家族をも大切にしたいと思えるのでしょう。

 

ただピッコロは、ひたすらに孤独です。自分自身は種を増やすことができませんし、神と分離する前の名前も知りません。ただ地球に逃げ延びてきてそこで神になったナメック星人の成れの果て、という事実しかないのがピッコロという存在です。ベジータと違いここからさらに人間臭くなるということはないのかなと思います。きっと寿命も悟飯よりずっと長いのでしょう。

 

むしろ神の気を得てナメック星人ゴッドにでもなってほしいと思っているんですけどね。鳥山明氏もアニメやゲームに関わるスタッフも、あまり活躍させる気はないようです。第7宇宙では一番破壊神に近いメンタルの持ち主ではあると思うんですが。