ドラゴンボールに登場する名前付きの必殺技は、かめはめ波や悟空の技以外は割と一回きりのことが多く、むしろゲームなどで定着している部分があります。ピッコロの代名詞でもある魔貫光殺砲も原作ではラディッツ戦以外では使用していません(ナッパ戦で似たような軌跡を描く技は使っている)し。ものまね芸人がよく使うフリーザの「デスビーム」なんてゲームで名づけられた技で、原作でもアニメでも一度も出てきたことのない単語です。
そんな中、ベジータは複数の名あり必殺技を持つ珍しいキャラクターです。それだけ大技を撃つ場面に恵まれているとも言えますが、それらの技にはどのような違いがあるのか、改めて考察してみたいと思います。
ベジータの元祖必殺技です。かめはめ波とそっくりな構えで撃つこと、そのかめはめ波との撃ち合いで押し負けたことで有名です。
技名は名乗っていませんが、フリーザ最終形態との戦闘でも同じような技を繰り出しており、全力の技がフリーザに蹴り返されたことが決定打となり、例の恐怖のあまり涙すら流すシーンに続きます。
ベジータが超サイヤ人になってからは、一度も使うことがありませんでしたが、「GT」ではベジータベビーが使用し、「超」ではベジータ本人が使用するだけでなくトランクスとの親子ギャリック砲まで披露しました。
かめはめ波そっくりな技ですから、原理もおそらく一緒で、「全身の気を凝縮して一気に開放する」タイプの技であると思われます。悟空戦では地球ごと破壊するつもりで放ち、フリーザ戦で放った技もピッコロがナメック星ごと破壊されることを危惧したほどでしたから、当時のベジータの最大の大技であることには間違いありません。
○ビッグ・バン・アタック
超サイヤ人になったベジータの必殺技です。こちらもメジャーですね。原作では人造人間19号に放った1回切りですが、18号に使った片手のエネルギー波もこの技の派生のような気がします。
アニメでは比較的出番が多く、ベジットが使ったり劇場版「激突!100億パワーの戦士たち」で使ったり、「GT」ではベジータベビーが何故かファイナルフラッシュの構えで使用する(ベジータの記憶を取り違えたとか言われてますね)など、ギャリック砲よりも有名な可能さえある技です。
この技は片手で光弾を放つだけなのですが、すさまじい破壊力で19号を一撃で破壊しています。また、超サイヤ人化した状態で空中から地表めがけて撃ったにも関わらず、ピンポイントで狙った敵だけを破壊していることから、ギャリック砲のように星ごと破壊してしまうようなことはないようです。
このことから、フリーザ以上の戦闘力を得て、地球を簡単に破壊できる力を得たベジータが、地球を破壊せずに相手にだけ大ダメージを与える技として開発した可能性が考えられます。
精神と時の部屋で修行した「超ベジータ」がセルに放った最高の大技です。だいたい、ベジータ最強の必殺技と言えばこれが挙げられます。
原作ではセル戦1回きり、アニメではセルジュニアにも使用しましたがフリーザのように蹴り返されてしまっていました。ただこれは光弾型かつ地表に向けて放っていたことから、実質ビッグバンアタックであった可能性があります。アニメスタッフはあまりベジータの必殺技を区別していないようです。
実はリクーム戦でもほぼ同じ構えの技を放っており、ゲームによってはこれもファイナルフラッシュであったとされています。そのためおそらく、精神と時の部屋で開発した技ではなく、元々ベジータの技のレパートリーにあったものと考えられます。
こちらは地球ごと破壊してしまう可能性があると言われていたことから、ビッグバンアタックとは違い手加減なしの大技であることが分かります。そうなると、同じく星を破壊する威力のあるギャリック砲とはどういう違いがあるか、気になるところです。
あえて違いを挙げるなら、ファイナルフラッシュの方が溜めが長いということでしょうか。最初から両手をくっつけてチャージするギャリック砲と違い、両手を広げて全身で気を高めた上で、両手をくっつけて気を集める描写があることから、より多くの気を長い時間をかけて練り上げている印象があります。
相手に隙があるときしか使えない、とっておきの大技というところでしょうか。
ちなみに「超」ではトランクスもファイナルフラッシュを使っていますが、溜めが短いため名前や構えだけ真似ているだけの技である可能性があります。
○(おまけ)ファイナルシャインアタック
「GT」で登場したベジータの新必殺技です。しかしGTのベジータはほぼ戦力外だったので、敵に一度もまともなダメージを与えることができませんでした。
技の構えも、初使用時は片手で撃つビッグバンアタック型だったのですが、その後ファイナルフラッシュのように両手で撃ったりもしていて、どんな技か全くわかりません。アニメスタッフはそもそもベジータの必殺技の扱いが適当なので、この技もちゃんと考えられていない可能性が高いと言えます。
あえて言うなら、そこまで溜めが長くない、片手でも撃てるなどの特徴から、ビッグバンアタックの発展型なのだろうとは思います。名前もそんな感じですし。
というわけで、原作で名前が出たベジータの必殺技の使い分けですが、
ギャリック砲…全力で撃つ技
ビッグバンアタック…星を壊さずに極限まで威力を高めた技
ファイナルフラッシュ…時間をかけて全身全霊で撃つ技
という感じなのかなと思います。
超サイヤ人化してからギャリック砲をあまり使わなくなったのは、使うとマジで星が壊れるからで、どうせ壊れるほどの威力になるならファイナルフラッシュでいい、ということだったのかもしれません。
そのファイナルフラッシュの使用頻度もあまり多くありませんが、隙を作れるような戦闘が多くなかったからなのかなと思います。余裕しゃくしゃくだったリクームとか、挑発してあえて食らうように仕向けたセルとか、特殊なシチュエーション限定の技なのかもしれません。
○(おまけ2)連続エネルギー弾(グミ撃ち)
名前はありませんが、ベジータの真の必殺技はこれですね(笑)他のキャラクターも(悟空も!)使ったことがありますが、ブウが使ったときに悟空が「ベジータの技」と理解したことからも(ベジータはデブブウ戦では使っていないのでブウは別にベジータの技としては学習していないはず)、ベジータの代名詞のようになっているのが分かります。
だいたい相手に効かない、この後だいたいベジータは致命傷を食らうなど、一種の死亡フラグのような技ですが、打つ手がなくなった時の破れかぶれといった側面もあるので、仕方のないことなのかなと思います。
そんなベジータの華麗なるグミ撃ちの記録を追ってみましょう。
(1)ザーボン戦
この時は瀕死からパワーアップしたことでザーボンに大ダメージを与えています。この技が「圧倒的優位の象徴」として使われた珍しい場面。
(2)リクーム戦
先述のファイナルフラッシュの原型技から続く連続攻撃。土煙がたつ→ノーダメージの黄金パターンが確立した記念すべき戦いです。
(3)セル戦
ファイナルフラッシュが通用せず、やぶれかぶれの状態で使用。当然ながら通用しませんでした。ファイナルフラッシュ→グミ撃ちは黄金パターンなのでしょうか。
(4)セル戦(その2)
自爆後に再生したセルにトランクスが殺され、逆上した状態で使用。こちらもノーダメージな上パンチ一発でKOされ、とどめを悟飯がかばってくれたことで悟飯が負傷。味方にも損害を与える最悪のパターンになってしまいました。
(5)ブウ戦
界王神界での純粋ブウとの戦闘で、悟空のチャージ時間を稼ぐために使用。ブウの肉体は破壊できているのですが、少しずつ後ろで再生を始めているのに気づかず撃ち続けるという、「土煙→やったか?」ではなく「志村うしろー!」という新しいパターンを披露しました。
ちなみに最初の地球での戦いでは悟飯に対して連続エネルギー波を使用していて、ザーボン戦も含めて当初は優位性を示す技として使われていたのが、強敵との負けバトルの演出として使われるように変わっていくいう演出上の変化が見られます。
一発の威力が高いわけではないので、一撃で大ダメージを与えられるような優位な相手にはより優位になるものの、全力で攻撃してもダメージが通るか分からない不利な相手には全く通用しないという技なのですが、逆上するとつい使ってしまうようです。
優位な相手にはとことん高圧的に、不利な相手にはひたすら焦るベジータのメンタル面を象徴する技なのかもしれません。
というわけで、ベジータの必殺技集でした。ベジータは非常に考察のしがいがあるキャラクターですね。