どらごんぼーる考察

がんだまぁBlogからドラゴンボール記事を移植しました。以後ドラゴンボール考察はここで展開します。

クリリンというキャラクターの位置づけの変遷

クリリンと言えば、ドラゴンボールにおける名脇役の1人として有名ですが、その立ち位置は割とシリーズごとに変化しています。その変化を追いつつ、クリリンというキャラクターについて少し掘り下げてみようと思います。

 

 

(1)少年時代:主人公の同門、ナンバー2キャラ

 クリリンは悟空と共に亀仙人の下で修行した、兄弟弟子というキャラでした。悟空にはないずる賢さを持つ反面、実力では常に悟空に一歩遅れるというポジションです。ただジャッキー・チュンや後のマジュニアを慌てさせる場面があるなど、ラスボス格のキャラに一矢報いるだけの実力は常に持っていました。

 悟空にとっては唯一同じ目線でしゃべれる親友(ブルマやヤムチャら、他のメインキャラは基本的に年上)であり、それ故に突然タンバリンに殺された時の衝撃は大きいものがありました。ピッコロ大魔王編がそれまでと大きく異なるシリアスさを演出できたのも、このクリリンの衝撃的過ぎる死にありました。

 

(2)サイヤ人編:実力が足りないなりの名サポート

 サイヤ人との戦いでは、他の戦士たちが次々と死んでいく中、悟空・悟飯親子以外で唯一生き残り、最後には元気玉べジータに当てて撤退に追いやる活躍を見せました。

 クリリンがここまで活躍できたのは、天津飯との戦い方との違いが物語っています。おそらくこの時点では、戦闘力上は天津飯の方が上だったと思います。それまでの経歴から、天津飯を上回るような修行をクリリンはしていないからです。

 しかし、天津飯はナッパの攻撃を真正面から受け止めてしまい、片腕を失い一気に致命傷を負ってしまう事になります。クリリンだったら、絶対逃げていた場面です。天津飯はなまじ自分の実力に自身があるが故に、そしてナッパの戦闘力を見誤ったが故に、受け止めてはいけない攻撃を受け止めようとしてしまった。その結果大ダメージを受けてしまい、死を早める事になってしまいました。

 それに対し、クリリンは相手の方が上であるということを認めた上で、虚を突く戦い方を繰り返し生き残っています。ガンダムで言う「こういう時、臆病なくらいがちょうどいいのよね」という奴です。ナッパ戦ではピッコロのサポートに徹し撹乱役を担い、べジータ戦でも尻尾の切断等要所のみ前面に出ています。

 しかも、クリリンには気のコントロールに優れるという長所が描かれるようになりました。拡散エネルギー弾や気円斬と言った気の性質を変化させる技を使いこなし、元気玉のコントロールも行って見せています。

 悟空やピッコロ、天津飯べジータと言った血気盛んな戦士とは違う一面を持っていることが、名脇役としての位置づけを確立させたとも言えます。

 

(3)フリーザ編:悟飯の良き兄貴分

 フリーザ編では、クリリンはさらに新しい一面を覗かせます。それが、親友・悟空の息子である悟飯と一緒に行動するという展開で現れます。ここでもクリリンは悟飯の方が実力は上であるということを認めつつ、悟飯に足りない経験や状況判断の部分をフォローし、より戦闘力の高い敵と遭遇しても逃げ切れるだけの立ち回りを見せました。作中でのコマ数という意味では、悟飯にとってピッコロや悟空よりも一緒にいる時間が長かった印象があり、父親や師匠としてではなく等身大の兄貴分として悟飯と接する姿が記憶に残りやすい物語であったと思います。だからこそ、フリーザ(第1変身)にやられた時、悟飯はピッコロがやられた時と同じくらい怒っていたんだろうなと思います。

 

(4)人造人間編:仙豆キープ係

 人造人間編では、早々に心臓病で退場してしまう悟空との絡みが少なく、ナメック星では親密だった悟飯との競演も少ないクリリンでしたが、ヤジロベーから渡された仙豆の所持役として、ヤムチャ・悟空・べジータ・ピッコロらを回復させる姿が多く見られました。血気盛んなキャラクターの中で「勝てない戦いはしないで逃げる」ことが出来る貴重なキャラだからこそ、自然にこの役が回ってきたのかなぁと思います。実際、17号・18号との戦いでも唯一戦闘に参加しなかった(できなかった)わけですからね。

 その後は18号とのロマンスが多少ありますが、ゲロの研究所や完全体セル戦などでトランクスに対しても兄貴役をしていたのも印象的ですね。実力では大きく置いていかれていても、リスペクトされる性格がそういうキャラにさせているとも言えます。

 

(5)ブウ編:そして戦力外へ

 ブウ編では髪を生やしたことで、もう一線を退いたということが明確化されます。一応バビディの宇宙船までは同行しましたが、事情が分かったところで撤退する気満々でした。その後も戦闘を行うことはなく、一般人ポジションのままでしたね。

 

(6)復活のF:まさかの戦線復帰

 フリーザの襲来に、頭を剃って戦線復帰しました。悟空とべジータが不在、悟天とトランクスは戦わせないという縛りでは、さすがにフリーザ一味と戦える戦力が少なく、戦線復帰せざるを得ない状況だったのかなと思います。実際、悟飯とピッコロと天津飯くらいしかあとは戦力がいませんからね。そりゃ亀仙人も出てくるというものです。

 しかし、もう一度ドラゴンボールの物語をちゃんと始めるのであれば、クリリンは欠かせないという判断だったのかなとも思います。その割に、宇宙サバイバル編では最初にやられてしまいましたが、あれは鳥山明氏の指定だったんですかねぇ…。

 

 

 というわけで、これらを総合すると、クリリンというキャラクターは、ドラゴンボールの物語において「勝てない相手とは正面からぶつからない」という戦い方をする事に希少性があると言えます。だからこそ悟空や悟飯のサポート役が務まり、他のキャラが一線から退いても活躍できる場があるのかなと。単に悟空の親友キャラというわけではないんですよね。

 メインキャラの中でも、クリリンの信頼は高い方だと思います。ナメック星に悟飯とブルマと3人だけで行くというのも、割とクリリンがいないと成り立たないトリオだと思いますね。ブルマにとってクリリンが男性とみなされていないのも重要なポイントです(笑)。

 悟空との絡みは、フリーザに殺されて以降あまりありませんが、そもそも悟空・悟飯・ピッコロ・クリリンあたりの絡み自体がかなり少なかった印象です。割と人造人間~セル編はべジータ・トランクス親子中心に回ってたのかなと思います。

 

 ちなみにコミュ力が高いのも密かな長所で、自分を殺した一味の親玉であるピッコロとは初の共闘ですぐに連携を取ったり(むしろ死んでたからこそピッコロ大魔王の恐ろしさを知らないのがプラスなのかもしれない)、フリーザ戦でもべジータと連携攻撃をしようとしたり、デンデに回復してもらうために半殺しにする役割を与えられるなど、悟空のかつての強敵と自然とコミュニケーションを取れる特異な能力を持っています。勝負に対するこだわりが少ない分、悟空よりも敵味方の概念が希薄なんじゃないかとさえ思いますね。敵キャラに対する敵対的な態度は「敵だから」というよりも「(殺されるかもしれないから)恐ろしいから」という感じですし。

 そういう意味で、ドラゴンボールに登場する戦闘要員の中でもかなり異質なキャラクターだと思います。そこが魅力なんでしょうね。