どらごんぼーる考察

がんだまぁBlogからドラゴンボール記事を移植しました。以後ドラゴンボール考察はここで展開します。

人造人間・セル編の本当の悪役は誰か

 たまたまドラゴンボール改CS放送で見ていて思ったのですが、やっぱり人造人間ってあんまり悪役っぽくないんですよね。

 例えば17号・18号は、誰も殺してないんですよ。悟空を殺すという造られた目的を果たすために行動してはいるものの、その過程で車を奪ったり服を奪ったりする中で一般人を傷つけてはいないんです。戦いを挑んできたベジータ達も殺してはいません。というか、17号と18号はベジータ達と戦う必然が全くないので、ただ因縁つけられたので返り討ちにしただけとさえ見えます(苦笑)。それをより強調しているのが16号ですね。悟空を殺すという使命は覚えているものの、それ以外については非常に温和です。

 また、セルについても、力を上げるために何人もの一般人を吸収してはいるものの、その目的は完全体になるという一点だけであり、単にそのために手段を選ばないだけという描かれ方をしています。だから、ピッコロもベジータもトランクスも殺していませんし、16号も完全破壊はしませんでした。最終的には踏みつぶして破壊しましたが、これも悟飯を怒らせるための一環でしょう。自爆からの再生後にトランクスを殺しましたが、これは流れ弾のようなもので特に狙ってやったわけではないような言い方をしていました。

 

 では、19号・20号についてはどうでしょうか。19号は20号の命令を聞くだけのマシーンでしかありませんでした。20号=ドクター・ゲロも、単に悟空を殺すためだけに人造人間を作っただけですし、自身を人造人間化したのは単に永遠の命を得るため、セルを作った目的も悟空の殺害ではなく単に究極の生物を作りたかっただけであるようです。マッドサイエンティストではあっても、ピッコロ大魔王やフリーザのような「戦わないと、地球人類が絶滅してしまう」レベルの極悪人とは少し趣が違うと言えます。

 

 そもそも、人造人間編の悟空たちの目的は何だったのでしょうか。それは、「滅びの未来を回避すること」でした。トランクスの未来のような悲劇が起きないようにするために、人造人間に先制攻撃を加え、戦って倒すことが目的でした。しかし、実は16号~20号までの人造人間も、セルさえも、トランクスの未来のような凄惨な世界を造る気はあまりなかったようなのです。

 起きたことだけを羅列します。

 

・悟空たちがトランクスに言われた人造人間の出現ポイントに移動。戦いを挑み19号を破壊、20号は逃走

・新たに現れた17号・18号にベジータ達が戦いを挑むも、敗れる。

・神様がセルの存在に気づき、ピッコロと融合。戦いを挑むも逃げられる。

・17号たちがカメハウスにたどり着いてしまったためピッコロが迎撃。そこにセルが現れて17号を吸収する。

・修業したベジータがセルを圧倒するも、好奇心から完全体になることを許した結果、逆転されトランクス共々敗れる。

・セルがセルゲームを開催。悟飯の秘められた力を知ったセルがそれを引き出させようと16号を破壊。覚醒した悟飯に倒される。

 

 こうしてみると、「誰も悪いことをしようとしていない」んですね。むしろ悪いことをする前に倒そうとして失敗を重ね、最終的に完全体になったセルが悟飯を怒らせて返り討ちに遭うというだけの話になってしまっています。

 そもそも最初に現れた19号・20号は何をしようとしていたのでしょうか。実はそこから不明のままなんです。悟空を殺すためだとしたら行動を起こす場所が無関係すぎますし、そもそも16号にインプットされていたくらいだからドクター・ゲロは悟空の家も知っていたはずです。セルのように一般人の気を吸収してパワーアップしようとしていたのかもしれませんが、ヤジロベーのエアカーを破壊したのは単なる無差別破壊のように見えました。「最初は未来の人造人間のように破壊活動を行う予定で描いていた」ということなのだと思いますが、本来の19号・20号の目的が何であったかは別として、悟空たちが19号・20号は「未来の人造人間と同じように行動するだろう」という予測に基づいて行動していたことは確かです。

 

 そう、すべての元凶は「未来の17号・18号がとんでもないワルだったこと」なんです。100%悪役と言えたのは、実はこの未来の人造人間だけなんですよ。こいつらだけは何の擁護すべき点もなく、トランクスに瞬殺されても惜しくない存在でした。こいつらがとんでもない悪であったせいで、原作世界の悟空たちは人造人間全てを悪と決めつけ、倒そうとしてしまったんです。

 つまり人造人間・セル編での悪役というのは、本当に「未来の人造人間」だけなんです。だから、これらをトランクスが倒して終わるわけですね。これらがいなければ、悟空たちは17号・18号と和解できたかもしれませんし、セルともいい好敵手になれたかもしれないんです。

 逆に言えば、ちゃんと人造人間編を「悪役を倒して終わる」話にするためには、何故未来の人造人間が悪い奴だったのかを明らかにし、同じ原因で悪に染まる存在を現代にも発生させるような演出が必要だったのかなと思います。以前考察で未来の17号・18号と魔人ブウの類似性を指摘しましたが、ブウの場合はそもそも存在そのものが悪だったということになりました。17号と18号の場合は、悟空を殺すという目的がすでに消失していたために暴走してしまったのではないかという推測を行いましたが、同じように「目的を消失してしまったことで暴走」したのであれば、例えばセルが完全体になることに失敗し、そのせいで暴走してしまい逆に手が付けられなくなってしまったという展開もありだったのかもしれませんね。ある意味自爆しようとしたセルがそれだったわけですが、それを単に悟空を死なせるための演出だけにせず、本当に倒さなければならない理由にしたら、もう少しすっきりした物語になったのかもしれません。