どらごんぼーる考察

がんだまぁBlogからドラゴンボール記事を移植しました。以後ドラゴンボール考察はここで展開します。

ドラゴンボール超 未来トランクス編 感想

 TVアニメであるドラゴンボール超は、ほとんど劇場版の展開をなぞるだけで、要するに原作に対するアニメ版ドラゴンボールZの立ち位置であり、しかも劇場版よりも非常に評判が悪かったため特に追いかけていませんでした。しかしオリジナルの展開に入ってちょっとずつ評判が良くなっていった上に、未来のトランクスが再び戻ってくるという話になったことから、全力で毎週録画して追いかけることにしました。個人的には、「未来のトランクスがまた戻ってきて本格的にストーリーを展開する」というのは、ガンダムに例えると「富野監督の新作アニメとしてF92が制作される」くらいのレベルの出来事であったので、大いに歓迎したものでした。それがまさか「シーブックもセシリーも死んで歴史も全くクロスボーンやVに繋がらない結末」のようにされるとは思いませんでしたが!(笑)

 ネタバレですし非常に不満だったので柄にもなく毒を吐きまくります。ご注意ください。


 この未来トランクス編、掴みは非常に良好でした。トランクスが悟空そっくりの謎の敵の襲撃を受け、命からがら過去に逃げてきて、現代の(大きく成長・変化を遂げた)キャラクターたちと再会する、というところまでは、誰もが脳内で描いたことがあるであろうトランクス再会のシナリオでした。トランクスの未来でもバビディダーブラが現れたけど、魔人ブウが復活する前に倒したというのは、フリーザ親子や人造人間も(戦いを楽しもうとせず)容赦なく瞬殺するトランクスらしいエピソードですし、そこで超サイヤ人2に目覚めていたというのも納得できる展開です。魔閃光を使うなどの(すぐ技とか忘れる鳥山明では絶対やらない)ファンサービスも良かったですしね。
 ただ、実際に悟空とべジータを連れて未来に戻ったところからの展開は、それはもう酷いもので、良かったことと言えばベジットがまた出たことくらいだったと思います。酷かった点をとりあえず列挙します。

・一度敗退した悟空が、何の策もなくすぐ未来に戻ろうとする
 →悟空は「負けないこと」を一番に優先するキャラなので、勝てなかった相手にまた挑む場合は必ず勝つために修行をする

・悟空が頭の悪いキャラとして描かれる
 →悟空は育ちの関係から一般常識が欠けているが、敵の弱点を見つけたり新しい戦法を編み出したりできるので、別に頭が悪いわけではない。細かいことや難しいことを考えるのは苦手でも、割と最適解にたどり着ける。

・結局何の策もなく未来に戻り、そしてまた敗退
 →いくらタイムマシンのエネルギー問題が解決したとは言え、頻繁に行き来しすぎ。時間移動は重罪だと言わせるなら、もう少し重く扱うべき。頻繁な行き来は尺を伸ばしたいだけに思える

・ブラックの正体であるザマスの時間軸がおかしい
 →公式サイトの説明ではビルスがザマスを消したことにより分岐したとあるが、そもそもブラックが未来から現れなければ悟空もビルスもザマスに会わなかったはずなので、歴史改変の順番が合わない

・強さの序列が曖昧
 →超サイヤ人2以下の実力のザマスに、超サイヤ人ブルーの悟空やべジータの相手ができるわけがなく、いくら不死身でも勝ち目がないので魔封波なんて使わなくても問題ないはず。怒りを爆発させた悟空でも勝てないブラックに瞬殺されたべジータが修行しただけで圧倒したり、都合に合わせて強さが変わりすぎ。ドラゴンボールにおけるパワーバランスはもっと戦闘力に忠実です。「復活のF」もピッコロの強さが過去との整合性という面では微妙でしたが、作品内での序列は明確でした。

・味方がいちいち間抜けすぎ
 →仙豆を忘れたり壷を割ったりお札を忘れたりタイムマシンをあっさり壊されたり、いくらなんでも毎回抜けすぎ。味方が馬鹿なせいで話がこじれるのは三流以下のシナリオ。

ベジットの時間が短すぎ
 →実はポタラには時間制限があったというのは百歩譲っても、エネルギーを使いすぎると早く解けるのはまずいでしょう。フュージョンと全く変わらないし、さんざん引き伸ばしてたんだからベジットで1話使うくらいの余裕はあったんじゃないのかと

・未来のマイが意味不明
 →現在のマイはドラゴンボールで若返って子供になってるだけで実際はもう中年のはずなのに、未来のドラゴンボールを使っていないマイがトランクスと同程度の年齢というのは辻褄が合わないと最初から言われていたのに、何も説明がなかった。そっくりなだけで別人なのかと思ったけどそう匂わせることもなく、カップリングとしても意味不明。単にトランクスの彼女役を新規で出すのではダメだったのか

・トランクスの強さに根拠がなさすぎる
 金髪のまま青いオーラをまとい強くなったり、元気玉のような力で剣を作ったりするのはいいんですが、そこに理屈が何も伴っていないのが不自然。基本的に、ドラゴンボールのパワーアップや必殺技には必ず理屈があるのですがそれが守られていない

・そして、何よりも結末が最悪
 →ザマスが宇宙そのものになって全王に消してもらうしかなく、世界は滅亡してトランクスとマイは別の自分がいる並行世界に帰るという、何も解決していない酷い終わり方。バッドエンドにしても「世界が滅んじゃったからよく似た別の平行世界に帰ればいいよね」という結末は下手なラノベでもないだろうというレベル。しかもそういう結末にならなきゃいけない必然がない

 色々不満がありましたが最後が一番ダメだったのでどうしようもありません。まさかGT以下の黒歴史確定とは思いませんでした。色々苦労してやっと平和を手にしたトランクスにこの仕打ちは一体何だったのでしょうか。
 前半はドラゴンボールをそれなりによく知っている人がシナリオを書いているんだなと思っていたんですが、後半はそれが嘘のようにドラゴンボールらしくない展開ばかりでした。一体何があったんでしょうか。特に「強さに説明がないこと」と「悟空というキャラクターの誤解」が目立った印象です。
 主人公たる悟空の性格を理解していないのは最も致命的でした。これで本当に鳥山明の助言を受けていたんでしょうか。またハリウッド版のときみたいにキレて新作作ってくれそうな気がしますが(笑)、本当に分かってなさ過ぎる。ブウ編の終盤にべジータが何で「おまえがナンバーワンだ」と言ったと思ってるんでしょうね。「負けないため」なんですよ、悟空が強いのは。勝てなかったら策を考えようとしたり修行するのはべジータじゃなくて悟空の役目なんですよ。というかブラックが強いならまず何で強いのか分析するべきでしょうに。正体が誰かじゃなくて強さの理由の方を探さなきゃいけないんですよ、ドラゴンボールは。そこに全く説明がなかったのも、大きな欠陥でしたね。

 どこまで鳥山明が考えたアイデアなのかはわかりませんが、個人的には今回の話は人造人間編のリベンジだったんだろうなと思ってたんですよね。「復活のF」がフリーザ親子の地球襲来のリメイクだったと考えられますし、その続きとなると人造人間編になりますよね。レッドリボン軍が作った人造人間が超サイヤ人より強いという展開はやはり説得力に欠け、未来の神が悟空の体を乗っ取って人類を滅ぼしにやってきたという方が納得できます。悟空も病気で死んでしまうのではなく、悪の存在になってしまうという方がインパクトが大きいでしょう。敵が悪ではなく正義側から生まれたので、ドラゴンボールを悪用できてしまうというのも考え方としてはありだと思います。ただそれを解決する手段を、ちゃんと考えてからシナリオを練って欲しかった。それに尽きますかね。
 最後、未来を滅ぼしてしまった理由はどうしても分かりません。全王を2人にしたかったのでしょうか。その理由も今後の展開次第なのかもしれませんが、無理矢理すぎるように思います。ビルスも含む全ての神々の中で頂点に位置する全王を2人にしてしまうというのも理解しがたいですし。ただあまりにも展開が無理矢理すぎるので、何か制作側にあったのかなぁとも思います。いずれにせよ黒歴史確定です。ドラゴンボールの原作は、鳥山明が直接作った作品だけで十分です(苦笑)。

 ではどんな展開なら良かったのでしょうか。とりあえず最後の展開はもちろん無しにして、トランクスがザマスを倒すのは良かった。それも未来の人々の力を借りて人間の力で決着をつけるというのも良かった。そのためには、まずトランクスが悟空(とべジータ)と修行するというシーンを入れておき、視聴者の見えないところで実は元気玉を教わっていたということにすれば良かった。ベジットはあくまでトランクスに決着をつけさせるため、自分ではザマスを倒さずトランクスの元気玉の時間稼ぎをあえて行うようなポジションで良かった。ベジットは新ナメック星のドラゴンボールで分離し、二つ目の願いでブラックに殺された人々を生き返らせれば良かった。これで十分でしょう。
 また何回も未来を行き来せず、ブラックが最初に過去に来たときに悟空がブルーになったのを学習してロゼになり、べジータが太刀打ちできなかったところで強制的に未来に戻ってしまい、勝つためにトランクス含めて修行するという展開で十分尺を稼げたと思います。まず悟飯・悟天・現在トランクスを集めて未来トランクスを超サイヤ人ゴッドにして、ブルーにもなれるよう修行するという話で良かったはずです。結局ブルーになれずじまいだったけど、決戦の土壇場でブルーに覚醒するという感じにできますし。あとは全ての神が滅んだ世界で、トランクスがサイヤ人の神として残るという結末でよかったんじゃないかと思います。マイは普通に別人でいい。
 あとはザマスがブラックになった理由ですね。トランクスの未来に現れた以上、トランクスが現在にやってくる前に歴史が変わっていないといけません。過去の設定から引っ張ってくるなら、セルに殺されたトランクスが干渉していた第4の歴史の悟空の末路でいいような気がするんですが、ややこしすぎるとは思うので、単純に第10宇宙の悟空の身体を乗っ取ったくらいで良かったんじゃないですかね。せっかく複数の宇宙があって、それぞれの歴史が微妙に違うというところまでやったんだから、実はタイムマシンの時空移動は複数の宇宙を移動してただけだったとかでもいいような気はしました。本当に時間をコントロールしているのはウイスの巻き戻しだけだったとか。
 そもそも、ザマスの思想があまりドラゴンボールっぽくないのが気になりましたね。第10宇宙にいるのに第7宇宙の地球を滅ぼそうとするのも意味がわからないですし。「人間」の定義も曖昧だったしなぁ。地球に獣人がいたり宇宙人がいろんな星にいる世界観における「人間」って何なんでしょうね。神以外の知的生命体って意味なんでしょうか。なんとなく、シナリオが破綻したのはザマスというキャラの設定自体をミスった結果であるようにも思えます。「悟空そっくりの敵」ってとこまでは良かったんですけど、そこから先はアニメスタッフ側が膨らませたアイデアだったのかもしれませんね、あまりにも鳥山明っぽくないので。またベジットを出せるから、ポタラを持ってる界王神サイドの人間が敵っていうのは良かったと思いますよ。でもザマスは界王神の見習いであって界王ではないと思うんだ。北の界王様が界王神になるとは思えないし、ザマスのポジションは完全にキビトの位置だったと思うんですけど。服装も含めて。

 とにかくこんなに突っ込みどころが多いドラゴンボールも初めてでした。GTも劇場版もここまで酷くはなかったです。でもゲームはめちゃくちゃ繁盛してるみたいだから、やっぱりビジネスで続けてるんでしょうね。ベジットブルーが出た週に各種ゲームでも登場してたみたいですし、そのスケジュールに合わせてあの出番の短さだったんでしょうか。ガンダムのビジネスも業が深いですが、ドラゴンボールもなかなかに業が深いようです。