どらごんぼーる考察

がんだまぁBlogからドラゴンボール記事を移植しました。以後ドラゴンボール考察はここで展開します。

何故、未来の人造人間は凶悪だったのか

 人造人間17号と18号は、原作の時間軸と未来の時間軸で、全く違う性格になっていました。いくら歴史が違っているとはいえ、同一人物であるはずなのに残忍さが違いすぎるような気がします。その理由を、魔人ブウをヒントに考えてみました。

 

  何故魔人ブウがヒントになったかという理由は、作中の正史世界では、未来からトランクスが来たことなどにより滅びの未来を回避しましたが、結局魔人ブウによって一度地球は壊滅してしまうんだよな、と思ったところにあります。

 おそらく作者はあんまり意図していないと思うのですが、トランクスの未来と作中の正史では、それぞれ悟飯とトランクス(と悟天)以外のサイヤ人は全て死んでしまうという意味で共通しています。違いはピッコロらサイヤ人以外の戦士たちが生きているかどうかなのですが、ピッコロ以外はほぼ戦力外なのであまり違いはないと言えます
 もう一つの共通点は、世界を壊滅させた側のバックグラウンドです。魔人ブウが世界を壊滅させたのは、生みの親であるバビディを殺し自由になった後で、ほぼ「遊び」の延長でした。サタンによって一度は手懐けられるものの、悪の魔人ブウに変身してしまった後は、一瞬でほぼすべての人類を皆殺しにしてしまいました。一方未来の人造人間も、生みの親であるドクター・ゲロを殺した後、ほとんど遊びで世界を壊滅させています。魔人ブウよりなまじ知能がある分、たちの悪い遊び方で少しずつ人類をいたぶり殺していました。

 ここで言えるのは、人造人間と魔人ブウのどちらも、「生みの親を殺した後、目標を見失ったことで遊びとして世界を滅ぼしている」ということです。どちらも何故生みの親を殺したのかと言えば、基本的には絶対服従を強いようとしたことによる反発からでした。ただ、人造人間が生みの親を殺したのは、未来世界も原作世界も同じです。その違いはどこにあったのでしょうか。

 人造人間の場合は、生みの親を殺したこと以前に、生み出された理由、つまり孫悟空を殺すため、という目的を失っています。人造人間側が、いつ未来の悟空の病死を察知したかはわかりませんが、未来の人造人間の狂暴化は、原作世界との分岐点ともなっているはずの「悟空の死」がキーになっているのではないかと推測することができるのです。
 未来の人造人間17号と18号が、いつどのような理由で行動を開始したのかは明らかになっていません。トランクスは19号と20号の存在を知りませんでしたが、それは「存在しなかった」のではなく、原作世界同様に19号と20号が現れたものの、ベジータたちに追い詰められて17号と18号を稼働させ、その17号と18号がベジータたちを皆殺しにしたため、その2体しか知られていなかったと考えることも可能です。そもそも、トランクスが予告した時間に19号と20号が現れたわけですし、(設定変更の名残とはいえ)トランクスはこの時現れた人造人間が19号と20号であると言っていたわけですから、未来世界においても19号と20号が存在していた可能性はないわけではありません。
 ただ、それ以前にドクター・ゲロが事前に悟空の死を察知していたかどうかという点がわかりません。スパイロボを常に派遣していたのであれば、悟空の死も知っていそうなものですが、未来世界でも原作世界でも同じ時間に人造人間が出現していたことを考えると、悟空の死を知らなかった可能性もあります。というか19号と20号が何故あの時間にあの島から行動を開始したのかが不明なので(苦笑)なんとも言えないのですが…。気を察知できない以上、悟空たちに奇襲をかけることも可能だったわけですから、あえて辺境の都市から動き始めた理由はよくわかりませんね。セルのように、一般人から気を吸い取ってパワーアップでもするつもりだったんでしょうか。この辺は人造人間編の設定の二転三転のあおりを食らった部分ですね。

 もう一つ鍵となりそうなのは、20号ことドクター・ゲロが原作世界において17号と18号を起動させたときに、「なおっておればよいのだが」と言いながら作動させ、17号と18号が完全服従しているように見えたことで「なおったようだ」と判断していることです。おそらく17号と18号が言うことを聞かなかったので、より強い洗脳のようなものをかけようとしていたのだと思います。未来世界では、この調整に失敗したことで、より狂暴な性格となって稼働したのかもしれません。
 原作世界でも、結局17号と18号の洗脳には失敗しているのですが、その性格はどちらかというと穏やかでした。「直っておればよいのだが」の発言から、一度制御に失敗して、停止コントローラーで停止させ、再調整したものと思われますので、未来の17号と18号はこの再調整を行う前の状態だったと考えることができます。何故未来世界では調整が一回少ないのか、それは「悟空が死亡したことを確認したから」なのではないでしょうか。

 つまり、こういう推測が可能なのです。ドクター・ゲロは悟空の死を確認し、目的を悟空の抹殺から本来の世界征服(?)に修正、その時点でより強力な力を持つ17号と18号の調整はあきらめ、19号と自身20号で計画を実行することにしたと。しかしベジータたちの力が予想以上に高かったため、20号は慌てて未完成の17号と18号を起動、しかしコントロールが効かず、自身は殺され、ベジータたちも皆殺しにされ、そのまま世界を滅ぼす活動に出てしまった、と。
 17号と18号に与えられた使命が悟空の抹殺から世界征服に変わっていたとすれば、その後の行動も理解できます。調整が不十分なので征服というよりは破壊に近いですが、その使命を行っていただけなのです。原作世界の17号と18号も、ゲロを殺した後は、結局目的がないので課せられた使命である悟空を狙うために行動し始めましたしね。
 つまり未来の17号と18号は、調整が不十分なためより狂暴な性格となっており、しかも攻撃対象が悟空個人から世界へと変わっていたために、あのような残忍な存在となってしまったのではないか、と考えることができるのです。

 魔人ブウバビディを殺して自由に過ごしている間に、ミスター・サタンに出会い、話の通じる存在になりました。原作世界の人造人間たちも、セルという共通の敵との戦いを経て新しい人生を歩んでいます。どちらも悟空が死んでいる(関わっていない)時の出来事なのですが、その悟空の死がちょっと早かっただけで、未来の人造人間とは和解できる可能性がなくなってしまったと考えると、いかに悟空の病死というのが歴史にとって大きな影響であったかがわかりますね。